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肌のpH

肌のpH(水素イオン指数)は皮脂膜の遊離脂肪酸や汗の成分、菌叢などによって決められ、個人差はありますが、pHは4.5~6.5の弱酸性になっています。脂性肌ほどpHが4.5に、乾性肌ほどpHが6.5に近くなります。市販されている多くの石鹸やボディーソープ、シャンプーなどはpHが10前後のアルカリ性ですが、皮膚には緩衝能があるので、洗浄後の皮膚の表面は一時的にpHが6.5~7.5ぐらいまでしか上昇しません。

その後徐々に2時間ほどかけて元のpHに戻ります。敏感肌やトラブル肌、頻繁に洗浄を繰り返している人は、肌のpHの回復に健康肌よりも時間がかかります。一般的に中性に傾いた肌は、刺激を受けやすく、デリケートな状態になっています。肌あれや敏感肌の状態では、pHのバランスを保つ働きが弱いため、外からの影響を受けやすく、皮膚トラブルを起こしやすいといわれています。

また、皮膚の表面には皮膚常在菌といわれる細菌が多数棲息しています。その種類や量は人によって異なりますが、10種類程度、約1兆個といわれています。主な常在菌としては表皮ブドウ球菌という球状の細菌です。また、アクネ菌といわれるにきびに関係する細菌も成人では個人差なく多数生息しています。皮膚常在菌は毛穴などにいて、皮脂と一緒に皮膚表面に出てきて皮膚を覆い、外部からの徴生物(大腸菌、黄色ブドウ球菌、縁膿薗、カビ、酵母など)を寄せつけないように皮膚を守っているのです。

皮膚常在菌は pH 5前後が生存の至適pHで、「肌は弱酸性がいい」と言われますが、pH5~6の弱酸性の肌コンディションは、表皮ブドウ球菌にとっても棲みやすい環境なのです。弱酸性の環境が棲みやすい表皮ブドウ球菌は、自分の住処である肌を弱酸性に保つ働きもしています。肌の菌を気にするあまり皮膚を洗いすぎると、表皮ブドウ球菌が減少し、肌が中性側に傾き、中性性を好む黄色ブドウ球菌が増殖し、結果、肌トラブルを起こすことにつながります。肌の菌バランスを整える“育菌”は、美肌づくりの基本です。

皮膚表面のpHが弱酸性に保たれていることは、皮膚バリア機能や菌叢バランスを維持するために重要ですが、石鹸洗浄によって一時的に皮膚表面のpH を上昇させることはメリットもあります。角層剥離にかかわっているトリプシン様酵素の至適pHは8.0なので、石鹸洗浄によって一時的に皮膚表面のpHが上昇すれば、皮膚表層の角層細胞の剥離が促され、くすんだ肌を透明肌にすることができます。

アトピー性皮膚炎では、皮膚表面のpHが常時上昇していることが知られており、pH の上昇そのものが、過度の角質剥離を誘導し、表皮の過増殖や黄色ブドウ球菌の増殖を促進すると考えられています。このように常時pH が上昇した状態が続くと、バリア機能が低下し、角層が剥がれ易くなるだけでなく、慢性炎症が生じ易くなると考えられています。

Maeda-lab.com

Aesthetic Science Research Lab., Tokyo University of Technology in Japan